メッセージ

古谷国際特許事務所

弁理士 古谷 史旺  黒田日銀総裁は、2019年1月24日付で行った記者会見で、物価・経済情勢の見通しについて、“我が国経済の先行きについては、海外経済が総じてみれば着実な成長を続けるもとで、設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を受けつつも、極めて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、2020年度迄の見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くものと見込まれます。”と述べていますが、この会見を聞いた視聴者インタビューでは、実感が伴っていないと懐疑的意見が多かったようです。
 技術開発力のバロメータである特許出願件数をみても、2017年に比べ昨年度が飛躍的に伸びたかと言えば、ほぼ横ばいで推移しています。この数字を飛躍的に改善できる方法を、先の「ご挨拶」で開示しましたが、知的財産制度を抜本的に改正し、世界に冠たる制度構築を目指す考えは、特許庁を始めとする関係官庁からは聞こえてきません。
 ところで、最近大きな話題をさらったのが“無印良品、中国でパクリ会社に提訴され一審敗訴「本物が偽物に負けた」とネット騒然”の記事ではないでしょうか。
 無印良品は、2005年中国に進出し、上海で中国初出店となる「無印良品MUJI」店舗を開店し、現在では中国に235店舗を展開しています。
 しかしながら、その当時の「無印良品MUJI」の経営陣は、何故かタオルや寝具など織物(第24類)における「無印良品」の商標登録を見送ったため、2001年に中国の海南南華公司に登録され、2004年8月に北京棉田に譲渡され、商標戦争が勃発し、上記ネット騒然の記事となり、係争は現在も継続しています。
 同様の争いは、「無印良品」に限らず、イチゴの「とちおとめ」でも起きています。これは韓国で勝手に他の品種と交配され、新品種として出回り、香港などに輸出されている問題で、“農林水産省は、韓国産イチゴの9割以上が日本の品種を交配して生産されたものとしており、日本のイチゴ業界が5年間で最大220億円分の輸出ができなかったと推計した”ことが報じられています(ライブドアニュースより)。
 このような事例は、世界に限らず日本でも起きています。例えば「ティラミスヒーロー」です。これはシンガポールのティラミス店『Tiramisu Hero』の商品コンセプトを模倣した日本企業が商標権を先取りしてしまったことで、シンガポールのティラミス店がブランドを変更せざるを得なくなってしまいました。この事件はマスメディアを含め多くの報道がなされています。
 平成26年(2014)4月25日付で弁理士法が改正され、「使命条項」が創設されて“弁理士は知的財産に関する専門家”と明記され、社会の模範となるべきことが求められています。
 それであるにも拘わらず、上記出願人の代理人に弁理士が納まっていることに、当時、「使命条項」の創設に深く関与した者の一人として、無念さを禁じ得ません。
 弁理士であれば、ことの是非を含めて、一度は立ち止まって、考えて欲しいものです。

弁理士 古谷 史旺