メッセージ

古谷国際特許事務所

弁理士 古谷 史旺  2002年に小泉純一郎氏が我が国の総理大臣に就任したとき、冒頭の国会における所信表明演説で、知的財産制度の強化を国家戦略と位置づけ、2003年には『知的財産基本法』を成立させました。さらに、裁判所法を改正し、2004年に『知的財産高等裁判所』を発足させ、毎年のように『知的財産推進計画』が発表されるに至っています。
 そのことにより、低迷を続けていた日本経済は見事に立ち直りをみせました。しかし、10年~15年と時を刻むと、さすがの神通力も失せて、元の木阿弥に陥っています。
 特許庁が公表している「特許出願等統計速報」の平成24年度累計によれば、特許・実用新案の年度累計は342,817件でした。3年後の平成27年度累計では324,423件で、▲18,392件が減少しており、経済の減速と平仄が合っています。
 私は、日本の特許出願を回復させる対策はあると考えています。そのことは前回の【ご挨拶】で触れました。6項目に亘る大胆な改革です。
(1)世界最速、最高品質の審査体制を、うたい文句ではなく、確実に実現すること。
(2)そのためには、審査官の数を現在の1800人から3600人へ倍増すべきこと。「国家公務員総定員法」が足枷になっているのであれば、弁理士を活用する等の別途方法を模索すべきであること。
(3)補正の回数制限、補正内容の段階的制限を廃止し、出願人にとり、出願し易い環境を再構築すること。つまり、出願抑制策を全解除すること。
(4)実用新案制度の無審査を廃止し、従前の審査制度に戻すこと。
(5)特許法104条の3を廃止し、特許庁の専門官庁としての位置づけを再評価すべきこと。
(6)損害賠償額を3倍以上とする法制に移行すべきこと。

 ことし召集された国会冒頭の演説で、安倍総理大臣が憲法改正に踏み込んだことから、憲法改正論議が再燃し、現在の憲法を根底から覆して改憲するのか、それとも憲法第9条の戦争放棄等の基本的事項は触れずに、「第9条に自衛隊と国際貢献のあり方を追加する」、「環境権を創設する」、「憲法前文に、基本的人権についての文言を追加する」、「地方自治の拡充について、を追加する」等の加憲に限るのか、未だ着地点は見えません。
 ところで、いまから遡ること13年前の平成16年に、日本弁理士会と日本弁理士政治連盟は、自由民主党を初めとする関係機関に対し、“知的財産権を憲法に盛り込むべきこと”を強く働きかけ、自由民主党の『憲法改正草案大綱』(平成16年及び平成24年)、更には読売新聞社の『憲法改正2004年試案』(平成16年5月3日)に『知的財産権』を盛り込ませることができました。
読売新聞社の『憲法改正2004年試案』
 第35条(財産権、知的財産制度の整備)
(1)財産権は、これを侵してはならない。
(2)財産権の内容は、公共の利益に適合するように、法律でこれを定める。
(3)私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
(4)国は、知的創造力を高め、活力ある社会を実現するため、
知的財産及びその保護に関する制度の整備に努めなければならない。


 上記の規定は、改憲ではなく加憲ですし、私どもからすれば素晴らしい内容であり、是非とも推進したいところです。憲法改正論議から取り残されないよう、しっかり注目していくことが肝要です。
 我が国に、真の意味での『知的財産立国』を実現させるためには、憲法にそのことが明記され、すべての国民がハッキリ意識することが不可欠です。
 私ども弁理士は、その先駆けとして“知的財産を憲法に!”の火を消さない不断の努力が求められます。

弁理士 古谷 史旺